つれづれ手帖

アラフォー。純ジャパ。国際結婚。

新郎のスピーチ

夫の家族と長い時間一緒に過ごしたり、結婚式を経験したりして、イギリスと日本の文化の違いをいくつか感じることができた。

 

例えば結婚パーティにおいて、新郎のスピーチの重要性

 

わたしたちの場合、式は神社だし、夜の食事も家族だけだから、いわゆる日本の披露宴のような形式的なものは必要ないと思っていた。

来賓のスピーチとか、花嫁の手紙とか。

友達や職場の人たちを呼んで行う披露宴だと、そういう暗黙の了解の範疇にある演出を加えざるを得なくて、どうしても家族がないがしろになってしまうけれど、家族だけの食事会だからこそ、ゆっくりお喋りをしながらディナーを楽しめるというもの。
だから、別に頑張らなくてもいいじゃん?という感じだったのだ。

 

しかし夫は「え!!!スピーチは必要でしょ!!新郎の!!!」

みたいなリアクション。

こっちこそえ!!!!である。
やりたいの?スピーチやりたいの?めんどくさいでしょ?日本人だったらスピーチしなくていいの!?やったー!!って感じだよ?(それは人それぞれ)。

 

夫は「新郎のスピーチは絶対必要!みんなそれを楽しみにしてるんだから!」と言う。

へー。そういうもん?

 

なのでその辺は夫に任せていたのだが、結婚式を数日前に控えて、いよいよスピーチ原稿も大詰めといったある日。ちょっと見せてもらったら、いやいや、めっちゃ長いやん!どんだけ喋るん!

私との出会い、そのときの気持ち、私をどう思っているか…云々…。

ひたすら恥ずかしい!

 

「…ちょっと待って、この出会いのくだりとか必要?」

「うん」

「長くない?」

「僕の友達の方がもっと長かったよ」

「それに、わたしのことをその…つまり…あ、愛してるとか、ちょっと恥ずかしいんだけど!」

「なんで?」

 

という風に会話がちぐはぐになってちょっとケンカになりそうになったので、お互いが譲歩し、内容はさておき、もう少しスピーチを短くするということで落ち着いた。

 

そんなわけでスピーチができたのは結婚式前夜。A4サイズにびっちり。

長いやんか!と思ったけど最初に比べたらだいぶ短くまとまったからよしとする。

そこからわたしは泊まっていたホテルの部屋で、持ち込んだMacでわたしの家族用に和約を作り、ホテルのフロントで印刷してもらったのであった。

 

そんな風にバタバタで用意したスピーチだったのだけど、夫の家族は「結婚式といえば新郎のスピーチだよね!!」というテンションだったのでとても喜んでいたし、わたしの家族は日本語訳を読みながらそのスピーチを楽しんでくれていた。

 

そんな様子を見て思ったこと。
これはイギリス人うんぬんではなくて、夫の家族の家庭環境かもしれないけれど、人の好意や真心を、素直に受け入れて喜ぶところが素敵だなってこと。

本当の気持ちを真正面から誰かに伝えることは、その関係性が近ければ近いほど恥ずかしくて照れくさい。
その煩わしさから逃げずに向き合うところは、そういうことから逃げてはぐらかしがちなわたしにとってすこぶるいい刺激になったし、見習おうと思ったのであった。